巻頭言
獨協新生の父
獨協学園長 天野 貞祐
日本全国の獨協学園関係者諸君 !!
諸君と共に獨協百年の祝祭を営むに当り、まず私見を述べる事を許していただきたい。
獨協百年に関する見解に到っては、基盤をなす物は百年の歴史的重さであると思います。誰か特に飛抜けている一人の人物とかいう者でなくて、一人一人の人が積み上げた百年だと思います。その積み上げる元になったものは、深く心に抱いた親切心とか、同情心だと思います。信頼のかたまりだと思います。それが火の粉となって、百年が燃え上がったのであります。今後も益々獨協学園が発展して、世界の大をなすと信じております。
顧みれば、私は明治29年、医科を志して獨逸学協会学校中学に入学しました。野球のけがや生母の死と言う如き不幸に、進学の勇気を失いましたが、内村鑑三先生の「後世への最大遺物」という著書によって奮起し、4年遅れましたが、獨協学園に再入学しました。大村仁太郎先生の特別な指導を蒙り、私は医科の希望を文科に転じて、第一高等学校に進学し、爾来、良師・良友に恵まれ京大を卒業しました。
教育50年の苦難を経て、母校獨協学園に返り来り、幸にして百年祝祭の一端をになう光栄に浴するに至りました次第でございます。
(昭和53年初夏、93歳、絶筆)
ここに授けられた自分という一個の人間を、その天分に従いつつ、その個性を生かしつつ、その型における最上のあり方に開発育成することが、すなわち自分を最上の自分に育てることが、わたしたちの任務であり、人生の意味だというべきでしょう。
友情という人生の幸福を享受する媒介者としてだけでも、
われわれは学園の恩恵を思わざるをえない。
天野 貞祐